換算表を覚えていても、迷う瞬間がある

バイヤーとして様々な靴のブランド・サイズ表記に触れ、登山靴ブランドの営業も経験し、販売の現場に立ったこともあるが、靴のサイズ表記の複雑さは、業界に長くいてもなくならない。US・UK・EU・JISと系統が複数あり、それぞれの換算表を頭に入れていても、いざ自分が客として接客される側に回ると「あれ、これで本当に合ってる?」と一瞬迷う瞬間がある。まして経験の浅い販売スタッフであれば、その場で自信を持って案内するのは簡単ではない。換算表があれば解決する話ではなく、現場でどれだけ実感を持って使いこなせるかが本質だ。

なぜサイズ表記は国によって刻みが違うのか

EU(フランス発祥)のサイズは「パリポイント」という単位が基準で、1サイズ=2/3センチ(約6.67mm)刻みで設計されている。一方、UKのサイズは「バーリーコーン(大麦粒)」という伝統的な単位が基準で、大麦3粒分の長さ=1インチ(2.54cm)という考え方から、1サイズ=1/3インチ(約8.46mm)刻みになっている。どちらも本来は端数の細かい数字だが、実務上はEUが約6mm刻み、UKが約4mm刻み(ハーフサイズ)として扱われることが多い。

なぜ単純に何倍もしても、長さと合わないのか

海外の靴選びで最も混乱するのが、「US7だからといって、サイズが1つ上がるときのピッチ幅(US7とUS8の差=約8.5mm)を7倍しても、実際の足の長さにはならない」という点だ。日本では「サイズが1つ上がれば1cm(10mm)くらい大きくなる」と誤認されがちだが、実際は約8.5mmずつしか増えない。しかも海外のサイズは「0cmから始まる普通の物差し」ではなく、すでに約19.5cmある大人の足の長さをスタートライン(1番)にして、そこから「1マス、2マス……」と目盛りを数えている。事実、大人の始まりである「US1」をセンチに直すと、ちょうど約19.47cmに相当する。

では、なぜ同じインチ基準なのに「UK6=US7」という数字のズレが起きるのか。理由はシンプルで、アメリカ(US)の物差しは、イギリス(UK)よりも、ちょうどマス目1つ分(約8.5mm)手前の、短いところからカウントをスタートしているからだ。スタートラインが1マス分だけ手前にあるせいで、同じ長さの靴を測っても、アメリカの物差し(US)のほうが目盛りの数字が常に「1」多く進んでしまう。これが、海外靴のサイズ番号がそのまま距離にならない理由であり、UKとUSで数字がズレる仕組みの正体だ。

なぜ「US7=25.0cm」という換算が定着しているのか

ここまでの計算では、US7は理論上、足の実寸24.55cmの人向けに設計されていることになる。ところが日本では「メンズのUS7=25.0cm」という換算が広く定着している。この差が生まれている理由は大きく2つある。

一つは「捨て寸」の存在だ。捨て寸とは、靴の内寸と足の実寸の差、つまりつま先にあらかじめ設けられている空間のことで、一般的に1cm前後が目安とされる。理論上の実寸24.55cmの人がそのまま履こうとすると、つま先に捨て寸のゆとりがなく指が当たって痛む。そのため日本のセンチ表記に直す段階で、この捨て寸のゆとりを織り込んだ上で、キリの良い25.0cmという数字に丸められていると考えられる。

これは、日本の老舗革靴ブランド「リーガル(REGAL)」の靴が、普段履くスニーカーより大きく感じられる理由とも重なる。リーガルはJIS規格に基づく「足入れサイズ」という考え方を採用しており、表記サイズと同じ実寸の足の人がちょうど良く履けるよう設計されている。靴の内側には、この実寸に加えて1.0〜1.5cm程度の捨て寸(ゆとり)が別途組み込まれている。一方、一般的なスポーツスニーカーの25.0cmは、靴の内部の空間の大きさ(履き寸法)がおよそ25.0cmに近いという考え方に立つ。同じUS7(設計上の足長24.55cm)を日本に持ち込む際、スポーツブランドは履き寸法基準で25.0cmの枠に当てはめ、革靴ブランドは実寸基準で24.5〜25.0cm相当として案内する。「実寸」と「履き寸法」、どちらの思想でサイズを換算するかによって、店頭での案内が変わってくる。

もう一つは、NIKEやadidasといった大手グローバルブランドのサイズ表記が、そのまま日本市場での換算基準として定着したことだ。実際、NIKE公式のメンズサイズ表でも「US7=25.0cm」と明記されている。こうした大手ブランドの表記が、日本での靴選びの共通認識になっていったと考えられる。

EUサイズとの関係も同じ構造だ。ヨーロッパ基準のEU39は、換算表によってはUS7・UK6と同じグループに分類され、cm換算でもおよそ24.9cm(約25cm)前後に位置づけられることが多い。ただし、この対応関係はブランドによって0.5〜1サイズ程度ずれることが珍しくなく、換算表そのものが唯一絶対の正解ではない。

レディースのサイズは、さらにもう一段ズレている

話はこれで終わらない。レディースのUSサイズは、メンズの数え方をそのまま流用せず、開始地点をメンズより1.5サイズ分(約12.7mm)短い位置にずらして設定されている。これは「女性の足は男性より平均して短い」という市場データを踏まえた歴史的な経緯とされる。結果として、UKとUSの差も、メンズでは1、レディースでは2と、性別によって変わってくる。

まとめ

こうした換算のズレは、靴を扱う海外ブランドが日本市場に参入する際、意外と見落とされがちな部分だ。サイズ表を用意するだけでなく、店頭スタッフが「実寸」と「履き寸法」の思想の違いを理解し、自信を持って案内できるレベルまで落とし込めているかどうかが、代理店選びの実務的な分かれ目になると感じている。

参考: NIKE公式サイズガイド(メンズ)、REGAL公式「サイズ選びのポイント」。換算値はブランドにより0.5〜1サイズ程度異なる場合があります。
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