「サステナビリティ」がそのまま響かない現実

海外のアウトドアブランドは、サステナビリティを前面に押し出しているところが多い。ただ、本国のメッセージをそのまま日本語に訳しただけでは、思ったほど響かないというのが実感だ。この感覚は、数字でも裏付けられている。PwC Japanが日中米英4カ国1万2,000人を対象に行った調査では、過去1年にサステナブルな商品を購入し今後も続けたいと答えた割合が、中国70%・英国65%・米国57%に対し、日本はわずか24%だった。

だが、同じ調査で日本の44%は、購入時にサステナビリティを考慮している。マイバッグや節電といった身の回りの行動は実践されているのに、その意識は商品の購買には結びつかず、何がサステナブルなのか分からないという情報の壁もある。この24%は、価値観の差というより、実践と言葉のあいだに橋がないという話だと思う。

サステナビリティという言葉より前からあった価値観

私自身が最初にサステナビリティという概念に触れたブランドは、フェールラーベンだった。コロナ禍より前のことで、サステナビリティを前面に出すブランドは、当時フェールラーベン以外にほとんど見かけなかった気がする。フッ素を使わずワックスで撥水性を持たせたり、化学繊維より劣化が遅い天然由来の素材をアウトドア用途で使いこなす工夫がされていた。

登山靴にも似た文化がある。昔ながらの手縫いの登山靴には、靴底を張り替える「リソール」という文化があり、これは他国と比べても日本では割と最近まで根強く残っていたように感じる。底を直すというより、足に馴染んだ履き心地をそのまま手放したくない、という気持ちが大きかったとも言える。

サステナビリティという言葉がなくても、直しながら長く履き続ける人は普通にいた。順番が逆なのだと思う。言葉が入ってくる前に、実践のほうが先にあった。だから本国のメッセージをそのまま訳しても響かない。

「快適性の持続」は、環境訴求を上回った

同じ傾向は、研究でも出ている。明治大学が2026年4月に発表した調査(日本人女性600名のオンライン調査と、20〜60歳3,000名を対象にしたランダム化比較試験)によると、環境保護や人権保護といった従来型のサステナビリティ訴求は、購買ロイヤルティに対して負の効果を示した。一方で、「快適性の持続」という新しいコンセプトの魅力度は50.5%で、ファストファッション(46.2%)や従来型サステナビリティ(34.5%)を有意に上回っている。

同じ調査で、耐久性は有意な効果を持たなかった。長く使えるというだけでは、人は動かない。「直して長く使う」を訴求軸に据えるだけでは足りず、肌触りが続く、足に馴染んだ感じが変わらないといった身体で確かめられる価値まで置き換えて初めて、購買の動機になる。リソールをして同じ靴を履き続けるのも、同じ気持ちなのだと思う。

橋を架けるのは、自分ごと化できる価値

環境保護やCO2削減という目指すところを、小さくしていいという話ではない。変えるのは入り口だ。日本の消費者には、「自分の生活が豊かになる」「モノを大切にする心地よさ」といった身近な価値のほうが入り口として響きやすく、自分ごと化できるかどうかが分かれ目になる。快適さが続けば、その分長く使われ、結果として環境への負荷も減る。

橋を架けるのは、環境の言葉を足すことではない。日本にすでにある実践を、身体で確かめられる価値に置き直すことだ。この再設計は、海外ブランドが日本市場に参入する初期段階で、きちんと詰めておくべき論点だと思う。

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