2026年も、JAPAN OUTDOOR GEAR SUMMIT(10月14・15日・新潟)、キャンプ&グランピングEXPO(11月25〜27日・東京ビッグサイト)など、バイヤーと直接顔を合わせられる展示会・商談会が複数開催される。海外ブランドが日本市場参入を検討する際、こうした場は代理店・小売バイヤーとの最初の接点になりやすい。
展示会で新興ブランドが直面する壁の正体は、実は製品の質とは別のところにあることが多い。多くのバイヤーがブースを回る目的は、既存の仕入れ先やブランドが新商品を出していないかを確認することであり、そこに新しい取引先を積極的に加えようとしているとは限らない。新規口座の開設には社内稟議などの事務的なプロセスが必要になり、それを主導するバイヤー自身も、取引を始めたブランドが不振に終わればその判断の責任を問われる立場にある。実績のある「安牌」なブランドとの取引を続ける方が、バイヤーにとって合理的なリスク管理だと言える。つまり新興ブランドというだけで、製品の良し悪し以前に参入障壁が高くなっているのが実情だ。
この障壁を越えるには、出展社自身が自社製品を語る熱量、製品への理解度、そして競合他社の製品についてもバイヤーと同等かそれ以上の知識量が必要になる。特に他社製品への造詣の深さは重要な部分で、私自身がブランド側にいた時代も意識して磨いていた点だ。バイヤーは、ブランド側の営業担当が自社製品については語れても、市場で競合する他社製品までは知らないと見ていることがほとんどだ。実際、私自身がバイヤーとして仕入れる側にいた頃も、展示会で出会うブランド担当者をそう見ていた。
だからこそ、接客の中でバイヤーにどれだけ自身の知見を示せるかが分かれ目になる。それができて初めて、バイヤーは「この相手は事務的な新規案件の一つではない、耳を傾けるべき話だ」と認識し、一目置く存在になる。
まず問われるのは、ブースをどう見せたいかだ。ブランド創生時のコンセプトは、例外なくそのまま貫くべきだと考えている。この根底の部分をアレンジすると、ブランディングそのものがブレる。ここを誤らないことが重要だ。たとえそのブランドで一番売れている品番やカテゴリーがあったとしても、そこに頼り始めると、いつしか本国とかけ離れたブランディングになってしまう。結果として、気づいた時には市場に飽きられているということも起こり得る。
そのため、仮に売りたいカテゴリーが本国と異なる、あるいは日本では本国と違う階層のマーケットに卸す必要があるとしても、ブランドコンセプトを日本向けに翻訳する場は商談の中であるべきで、展示会のブースではない。ブースは、その製品作りを始めた時に描いていた本来のターゲットを一貫して貫くべきで、来場者全体や最大公約数に合わせようとする構成は、結局コアメッセージを薄め、誰の記憶にも残らない。
その上で、可能な限り、展示会前にブース訪問のアポイントは取っておくべきだ。直接の接点がなければ、業界内の接点を通じて紹介してもらう方法もある。例えば、OEM企業が自社のハウスブランドを立ち上げる場合であれば、自社の既存のOEM担当者から取引先を紹介してもらうといった動きが、限られた展示会の時間を有効に使うことにつながる。
さらに、来場するバイヤーには、卸条件そのものが取引開始の決め手になるタイプ、独自のMD(品揃え)による差別化を売りにしているタイプ、市場での実績がなければ導入しないタイプなど、いくつかの典型がある。このケースバイケースの反応を想定し、事前に回答を用意しておくかどうかが、次の商談につながる確率を左右する。
展示会は単なるイベントではなく、顧客開拓、ひいては代理店選定や卸条件交渉という一連のプロセスの入口である。だからこそ、実績のない新規参入ブランドがここに食い込むには、バイヤーのタイプに合わせた緻密なロジックが欠かせない。独自のMD(品揃え)による差別化を狙うバイヤーには、自社ブランドを導入することで「店舗にどんな新しい売上(恩恵)がもたらされるか」を具体的に示す。逆に、実績を重視する手堅いバイヤーには、その差別化がいかに市場に受け入れられるかという「納得感のあるストーリー」を用意する。バイヤー時代の経験から言えば、この層が求めているのは楽観的な期待ではなく、判断の根拠になる具体的な材料だ。知名度のないブランドが、出展するだけで自然と認知されるほど甘くはない。出展の可否を検討する段階から、「どのタイプのバイヤーに、何のメリットを持ち帰ってもらうか」。その商談シナリオを徹底的に設計して臨むことこそが、2026年の展示会を勝ち抜く最大の鍵となる。
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